日本酒の会「いづみ橋の会」が開催されました。
みなさん、こんにちは。いよいよ本格的な寒さ到来ですね。私は只今地元信州・諏訪におりますが朝は当然の零下、山々は冬の装いですが、テレビでは箱根が紅葉の真っただ中だとか。。。羨ましい。ですが、日本列島南北に連なる地形は、それはそれでいろんな風土があって食べ物もお酒もそれぞれに楽しめていいですね。
ということで今回も素晴らしい会が開催されました。神奈川・海老名から「泉橋酒造」さんをお招きして第五回目となる木花の日本酒の会です。まず泉橋酒造さんの一番大きな特徴は、純米酒のみを作られている蔵元さんである、ということ。つまり、米(米麹)と水のみで作られる日本酒ですね。となるとお酒の味わいの幅が純米酒のみという通常より狭いふり幅の中でとても幅広く作り分けていらっしゃるのです。素人の私たちには日本酒の会としてはなかなか難易度が高いわけです。
と、言い訳をしておいて、さてさて、会のご報告をしますね。
1、とんぼスパークリング
◆関鯵フライ
安曇野産山葵海苔・穂紫蘇天婦羅・インカの目覚め・山葵塩
さすが泉橋酒造さんのスパークリングです。全く甘さのないしっかりした味わい。食前酒としてさらっとまずは飲みましょう、というようなものではないですね。がっつりどのタイミングでもいただける本格派です。ということで、お料理はいきなり鯵フライからスタートしました。私も少しびっくりしました。ですが、この鯵フライ、お刺身でぜひ食べていただきたい関鯵をあえて上品にフライにしてお出ししました。相性は抜群でした。
2.恵 青ラベル 純米吟醸
◆氷下魚と里芋のけんちん汁
恵 青ラベルは、キリッと辛口かつ旨口。和食にはどうやっても合ってしまうでしょう、という王道をいく日本酒です。合わせるお料理のけんちん汁は、味は上品で、塩はあえて少したてて、イクラをアクセントに添えました。このけんちん汁を食べながらお酒をいただくと、またお酒がさらにキリッと締まるのです。「よく引き立てる」という手法をとることはありますが、「さらにお酒が引き締まる」というのも新しい発見でした。
3.雪だるまラベル しぼりたて 楽風舞
◆天然鯛 昆布〆
水前寺海苔 山葵 いり酒
こちらのお酒、なんと本当の出来立てほやほや。作りたてを蔵元さんから譲っていただきました。日本酒の会が一週間早かったら残念ながら飲めませんでした。しかもこちらは、神奈川県産風楽舞を使用した記念すべき一本目のお酒です。しぼりたて、できたて、しかも生。こちらは、ズバリ、お造里でいただきました。最高の天然鯛をあえて昆布〆して、さらに醤油ではなく「いり酒」でいただきました。お造里もお酒もどちらも引き立て合う、最高に良い組み合わせだったと思います。
4.雪だるまラベル 粉雪にごり 純米吟醸
◆あん肝わさびいなり
こちらのお酒は、先ほど同様冬限定の日本酒。山田錦らしい米の旨み(甘味)をしっかり感じることのできる口当たりもなめらかな濁り酒です。さらっとした口当たりがとても心地よくていいですね。まさかのいなり寿司でしたが、あん肝がとても良いアクセントで全体のバランスはとてもよかったです。
5.恵 海老名耕地 純米酒
◆佐渡の鰤大根
こちらのお酒、これぞ「いづみ橋」といえるのではないでしょうか。精米歩合が80%ではありますが、雑みというよりお米本来の強さをしっかりと感じる深い味わいで、冷ももちろんですが、お燗も最高。これに合わせるのはもうこれ以上もこれ以下もないのではないかといえる「鰤大根」。合わない訳がない。鮮度のいい鰤と味付けを少し控えめにし、黒七味でアクセント。本当に美味しい組み合わせでした。大満足です。久しぶりに最高に美味しい熱燗もいただけて感激しました。
6.黒とんぼ 生もと 純米酒
◆下仁田葱炭火焼
ここから3種類のお酒は、米違いの生もと造りの純米酒が続きます。削りもほぼ一緒。そろそろ酔いもまわりだし違いがどんどんわからなくなってきてしまいました。大丈夫かなぁ。うまくご報告できるか心配になってきました。生もとづくりとしてはとてもきれいな辛口という印象。「生もとづくり」とは、明治時代中盤まで主流に使われていた伝統的な酒造りの手法で、自然の乳酸菌の力で雑菌を排除して酵母が働きやすい環境をつくり、さらに山卸しという米をすり潰す作業を行う醸造方法です(かなりざっくりの説明ですが・・・)。つまり何を言いたいかっていうと、無菌状態で過保護に育てられたお酒でなはく、昔は顕微鏡もない、科学的な知識もない中で、目に見えないたくさんの微生物と戦いながら、強い乳酸菌をうまく取り込んでお酒が作り上げらて来たわけです。だから、やっぱり生もとづくりのお酒は野性味のある味わいに仕上がっています。その中でも「黒とんぼ」はすっきりとした飲み口のお酒でした。合わせたのは下仁田葱の炭火焼き。キメの細かい酸と葱を焼き上げることで出る本来の甘味との相性は抜群でした。
7.茜黒とんぼ 生もと 純米酒
◆松茸とこのわた茶碗蒸し
こちらは「黒とんぼ」とは反対に柔らかい印象。ですが、がっつり生もとづくりの味わいです。お米は泉橋酒造さんの自社田で栽培された「亀の尾」というお米が使用されていました。あ、そうそう。「いづみ橋」さんといえば、なんといっても「酒づくりは米づくりから」という信念をお持ちの蔵元さんで、米の栽培から精米、醸造までを一貫してやられています。米を知り尽くした皆さんが醸すお酒ですから、やっぱりこうしてお米の旨みをしっかりがっちり引き立てる味わいのお酒が本当に上手な蔵元さんです。合わせたお料理はすずきで出汁をとった茶碗蒸しといいながらスープ蒸しかな。甘味、旨味を存分に引き出してくれました。お酒に負けちゃうのかな、と思ったけど、そんなことはありません。松茸のえぐみや香り、この綿の味わいがなんともうまく合わさっていてとても美味しくお酒が進みました。
7.桃色黒とんぼ 生もと 純米
◆ずわい蟹真上揚げ
こちらのお酒は飲んだ時にまず先に酸がふっと感じられました。そのあと旨みがぐーっと来る感じ。しっかりとした米感や旨みもあっていろんな味わいが楽しめるお酒でした。蟹との相性はとてもいいように感じました。
最後に・・・9.純米梅酒 山田十郎
これもまたすごい。いづみ橋酒造のこだわりは梅酒にまで及ぶのか・・・というものでした。これは日本酒です。もちろん梅酒なんですが、こんなに酒らしい梅酒は始めてでした。お料理にも合わせてみたくなる梅酒です。
なんて言っていたらもう最後になってしまいました。どれもおいしくて楽しくてお話しも面白くてまだ余韻が残っているのですが、いづみ橋さんの印象はとにかく生真面目にコツコツ変わらずに米本来の旨みを引どうき立たせるか、今流行りのタイプのお酒とは真逆を行くどっしりと構えた酒蔵さん、という感じでしょうか。こういう蔵元さんがあってよかった。
もしも一回原点に戻ってみたい、と思ったら、是非一度いづみ橋さんをじっくり味わっていただきたいなぁと思います。また、今回、冷とお燗でいろいろなお酒の飲み比べをさせていただき、改めて日本酒の奥深さを実感しました。日本酒とは本当にすごい酒です。和食にたずさわる私たちは、もっともっと日本酒の世界を皆様に発信してゆかなくてはなりませんね。これからもますます頑張らなくては。
今回蔵元さんから来てくださった副杜氏の寺田さん、本当に長時間わたりに貴重なお話ありがとうござしました。いづみ橋さんのお酒をそのまま映したような一途でひたむきで一本筋の通った素敵な方でした。いづみ橋さんより参加者全員にオリジナルの平盃もいただきました。平盃は「い」の口で呑む、おちょこは「う」の口で呑む。「い」で呑むことで舌の側面で酒を味わう。舌のどこに酒があたるかで味わいが全く変わるのだと教えてくださいました。お酒の詳しいお話もどれもわかりやすく、雑学はどれも楽しく、本当に素敵なひとときでした。本当に本当にお世話になりました。そして、一緒にお手伝いくださいました勝鬨酒販の黒沼さん、いつもありがとうございます。いづみ橋さんの魅力を参加者の皆様に全力でお伝えしてくれようと本当に頑張っていただきました。お陰さまで本当に素敵な会になりました。
最後に、ご参加くださいました皆様。ありがとうございました。皆さまのお陰で最初から最後までとても楽しい時間を作っいただきました。木花は、これからも日本酒をさらに美味しくお召し上がりいただくために精一杯頑張って参ります。どうかこれかもよろしくお願い致します。